太陽光発電システムはどんな機器で構成されているの? 太陽光発電システムは、基本的に太陽電池モジュール、接続箱、パワーコンディショナ―、ケーブル
から構成され、これを分電盤につないで発電電力を供給します。これらに HEMS や蓄電地、電気自動車 等を組み合わせることで、発電した電力を住宅でより多く効率的・効果的に利用することができます。
太陽電池モジュール 太陽光エネルギーを直接電気エネルギー(直流)に変換するパネル。 接続箱 太陽電池モジュールからの直流配線を一本にまとめ、パワーコンディ
ショナ―に送るための装置。
図 1-7 太陽光発電システムの基本的な構成
出典:「消費者安全法第 23 条第 1 項の規定に基づく事故等原因調査報告書 住宅用太陽光発電システムから発生した火災
事故」、「太陽光発電システム PV 施工技術者研修テキスト」
1-1-4 住宅に設置する太陽光発電システムはどうやって使うの? 太陽光発電システムは、太陽光が得られる時間帯に発電します。一般的に晴れた日の日中に最も多
く発電し、夜間は発電しません。曇りの日は晴れた日の 40%~60%、雨の日は 25%程度の発電量にな るといわれています。
●発電する時間帯は
住宅に太陽光発電システムを設置する場合、一般的に発電した電力はまず設置した住宅で使います(自 家消費といいます)。標準的な住宅では、朝方と夕方から夜にかけた時間帯で電力が多く使われ、外出し がちな日中は使われる電力は少なくなります(住宅で使われる電力量のことを電力需要といいます)。
一定規模以上の太陽光発電システムを設置した場合、晴れた日の日中は自家消費しても発電電力が余 ります(余剰電力といいます)。余剰電力はそのままではためておけないので、電力会社の電力網(商用 電力系統)に流して(逆潮流)、他の場所で使ってもらいます。この際に電力会社に流した電力は売るこ とができます(売電)。
機器名 | 機能 |
パワーコンディショナ― (パワコン) | 太陽電池モジュールが発生する直流電力を最大限引き出すように制御 するとともに、家庭で使える交流電力に変換するための装置。自立運 転機能を備え、電力会社からの電力が停電した際に電力を供給できる ものもある。 最近は、接続箱と一体となったパワーコンディショナ―も普及してい る。 |
●発電しない時間帯は 逆に、早朝や夜間は電力需要が多くなりますが、太陽光発電システムは発電しません。このような時間
帯は電力会社から電力を購入します(買電といいます)。曇りや雨の日など発電量が少なく電力需要が多 いときにも電力を購入します。
晴れた日 発電量 売電分
発電電力の 余剰電力分
曇りの日 雨の日
電力需要
発電電力の自家消費分
朝昼夜朝昼夜朝昼夜 買電分
日中の発電量が多く、余剰電力が 多く発生する
日中の発電量が少なくなり、日中 さらに発電量と余剰電力が少なく でも電力需要が多い場合は電力を なり、購入電力量が増える 購入する必要がある。
図 1-2 電力需要と発電量の関係
●系統連系とは このように、太陽光発電による余剰電力を電力会社に売電したり、発電電力が足りない時に買電する
ように太陽光発電システムを運用することを系統連系といいます。ただし、ごく小規模な太陽光発電シ ステムの場合などでは、系統連系をせず独立して設置することもあります。
太陽光発電システム
余剰電力 逆潮流
(売電)
購入 (買電)
図 1-3 系統連系のイメージ
自家消費
住宅
●余剰電力を売電する ~FIT と卒 FIT ~ 発電電力を自家消費したうえで余った余剰電力を電力会社に売電する制度として FIT(Feed-in Tariff
再生可能エネルギーの固定価格買取制度)が整備されています。FIT は、太陽エネルギーなど再生可能エ ネルギーからつくられた電力を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取ることを国が保証する制度で す。住宅に設置されることの多い容量 10kW 未満の太陽光発電システムの場合、買取期間は 10 年です。 買取価格は毎年改定されており、2023 年度は 1kW あたり 16 円※となっています。
10 年間の FIT 期間の終了後(卒 FIT は、太陽光発電システム設置者は新たに売電先の電力会社と契 約することになります。その際の買取価格は各電力会社が設定したものとなります。
※FIT 制度を利用するにあたり経済産業省から事業計画認定を受けた認定日が属する期間の価格が適用されます。
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商用電力系統 (電力会社の 電力網)
発電所
太陽光発電システム 設置
●自家消費量を増やす方法 余剰電力は、商用電力系統に逆潮流させるほかに、蓄電池を設置して発電電力を溜めておき、太陽光発
電システムが発電しない時間帯や、発電量が足りない時間帯に使用する方法があります。また、発電量の 多い時間帯に電気温水器で湯を沸かし保温しておいて早朝や夜間に湯を使ったり、電気自動車を充電す るなどして、日中の電力需要を増やして余剰電力を減らし、住宅内でより有効に発電電力を活用する方 法があります。
10 年後 卒 FIT
卒 FIT 後 (改めて電力会社と契約。
買取価格は契約条件による)
FIT 期間 (余剰電力は一定価格※で買い取り)
図 1-4 ※経済産業省による事業計画認定日が属する期間の価格
FIT 制度による余剰電力の買取期間
余剰電力 逆潮流
(売電)
購入 (買電)
自家消費量を増やす工夫
太陽光発電システム
電気自動車等 電気温水器
蓄電池
商用電力系統 (電力会社の 電力網)
発電所
湯
電気
自家消費
住宅
図 1-5
●災害時に非常用電源として使う自立運転 災害時などに停電し商用電力系統からの電力が途絶えてしまったとき、太陽光発電システムを非常
用電源として使うことができます。これを自立運転と言い、系統連携させた太陽光発電システムを系統 から切り離して運転することを指します。一般的には、晴れた日で十分発電できる時間帯に 1.5kW まで の電力を使うことができます。
自立運転する際は、パワーコンディショナ―にある切り替えスイッチで自立運転モードに切り替える 必要があります。また、自立運転をする際に電力を取り出すコンセントは普段使うコンセントではなく、 あらかじめ決められて設置されたものになります。
太陽光発電システムの自立運転は、日中発電する時間帯にしか活用できませんが、蓄電池を併設して おくと、停電時の夜間にも一定量の電力を確保することができます。
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図 1-6 太陽光発電システムの自立運転利用 出所:杉並区ホームページ
ハイブリッド蓄電池 最近、太陽光発電と蓄電池に欠かせないパワーコンディショナ―を1台で兼用する蓄電
池システムが発売されています。 パワーコンディショナ―は、太陽光発電や蓄電池の直流電流を、住宅で使う交流電流に 変換する機器です。太陽光発電と蓄電池を設置する場合、通常はそれぞれ1台ずつのパ ワーコンディショナ―が必要ですが、ハイブリッド蓄電池は、いずれの電力も変換する ことができます。 ハイブリッド蓄電池を利用すると、太陽光発電による電流の変換ロスを減らすことがで きるほか、停電時に太陽光発電の電力で充電しながら蓄電池から電力を取り出し使うこ とができるなどのメリットがあります(太陽光発電のパワーコンディショナ―は自立運 転時の出力が 1.5kW 以下ですが、蓄電池のパワーコンディショナ―では、自立運転時に 一般的に 4.0kW~6.0kW の出力を得ることができます)。